L-M BRIC NEWS
南米コロンビアのワヒラインディアンの L-M組紐技法木下雅子
昨年(2006)夏、WALE'KERU vol. I. vol. II (Marta R. Zapata, Bogota: Carbones de Colombia, 1999, ISBN 958-958650-3) という、南米コロンビアに住むワヒラインディアンの染織技術其の他の採録報告の中にループ操作技法があるとの知らせが届いた。この本はコロンビアのボゴタ で発行され、スペイン語である。コロンビアのBiblioteca Luis Angel Arango (ルイス・アンジェル・アランゴ図書館)のBlaaバーチュアル図書館からダウンロードできる。
http://www.lablaa.org/blaavirtual/modosycostumbres/wake1/indice.htm
And
http://www.lablaa.org/blaavirtual/modosycostumbres/wake2/indice.htm
本稿でWALE'KERU 中のループ操作組紐技法に関する部分について報告する。
編者が知る限りに於てこれまでの記録にない多数のループ組紐手順を含み、技法の解説は正確で、また従来の記録からの推量を破る新事実を含む、ループ組紐技 法の重要な採録記録である。
ワヒラはコロンビアの北東部からベネズエラの西部地方にかけての辺境に在住する。その地の原住民については16世紀頃からのスペイン人の記録が残るが、は たして現在この地に住むワヒラの祖先であったかどうかはわかっていない。元来南米の北部に住んでいた原住民たちが、その土地が彼らに関係なくコロンビアと ベネズエラに分割されたために、2国に別れて住む事になったわけである。世界有数の露天石炭鉱山のある地だが、彼らの生活はそれで潤うよりも、強制移動な どを強いられる結果になっていると聞く。
著者マルタ・ザパタはワヒラが住むコロンビア東北部の辺地に10年間通って採録した。採録は組紐のみではなく、衣類、背負袋、履物、食器其の他の儀式及び 日常用品に用いられる手工芸全般にわたる労作である。情報源が高齢者である事からも推察できる貴重な記録である。どのページを開いても、組紐技法の情報を 見るという第一目的を忘れて途中下車したくなる興味深い技法、作品、生活の絵に満ちている。書名はワヒラに織物を教えてくれたという伝説の蜘蛛に由来す る。挿し図によれば大きなテント状の巣を張る毛むくじゃらの蜘蛛らしい。
組紐技法に限って言えば、第1巻では、それぞれの組紐の作り方が紐が付属する衣類などの本体の作り方と共に解説されている。第2巻では、第1巻であちこち に散っている関連技法を章別にまとめて、技法の全体像が見渡せるように計っている。
組紐には、「トウモロコシの花」「ネズミの尻尾」など、彼らの生活に繋がる名前がついている。
手順は段階を追って詳しい正確な図解つきで解説されているので、スペイン語を知らなくても結構理解出来る。ループの初期配置と基礎的な初期色配置も図示さ れている。組み方については、図解に基づいて組成した紐の組織が、それぞれ書中の組織図に一致し、また構造的にも矛盾がないことを確かめて正確を期した。 必要に応じて無料オンラインS-E翻訳 http://translation2.paralink.com のお世話になった。しかし、間違いの責任は編集者のものである。
コロンビアの原住民のテキスタイル技法に関する採録研究には、Marianne Cardale-Schrimpffの膨大な博士学位論文があるが、残念なことには公刊されていないために入手し難いという事情からも、非常に貴重な著書 である(註1)。但しWale'keruも書 籍を入手するのは難いようである。
本書の採録に見られる新事実
1:ワヒラはループ組紐操作技法の主要2法、即ち「掌を上向き」にして「人さし指(外側指)で操作する方法」=第1法と「小 指(内側指)で操作する方法」=第2法を両方共使う(註2)。 同じ組紐を二通りの方法で組むのでは なく、それぞれに対してどちらか一方を用いる。
ループ組紐の従来の例では、第1法はヨーロッパ、アフリカ、中南米に、第2法はおおむねアジアに見られ、混ざる事がなく、また地域的に偏向して分布してい るかのように思われてきた。本書の報告によって必ずしもそうではない事例が見出されたことに注目したい。
2: ワヒラはループを「掌を上向き」に持 つが、第1法、第2法のいずれを使うかに関わらず、綾を取りループを移動するには操作手の掌を下向きにして行う(註3)。掌を下向きにしてループを取 るとすると、糸を上から指で引っ掛けることになる。従って始め にこの体制を明記しておけば、ループ移動にはループの脚のいずれを取るかさえ指定すれば足りる。即ち:
ループの外側の糸(外側又は上糸)を取れば「閉」移動、内側の糸(中側又は下糸)を取れば「開」移 動になる。
3:不正規組織組紐(UO)の既存例では、レべデーヴァの東部スラヴ地方の採録報告の1例に第2法が用いられている以外は第1法を使うもののみであった が、ワヒラは第1法と第2法の両法を用いる(註4)。 但しワヒラが第1法を用いるのは、UO No. 1(「開・開」移動で組成)とそのバリエーション(「開・閉」)の2種類のみである。他の6種類には全て第2法を用いる。初出の手順も多い。
ワヒラのループ組紐12例の手法、組織、構造の概要
以下のワヒラの12種類の手順についての解説は正確を期したが、誤ちに気がつかれたら知らせて頂きたい。
実技はイラストL-M 指操作 組紐技法解説シリーズ no. 10に 解説する。
本稿で用いる組紐番号(#x)は編者が便宜上 WARE'KERU II の記載順に付けたものである。
従来の記録ではループ数5の場合 が大多数であるが、この採録ではループ数4のもの2例, 8のもの1例がある以外は全て7である。ループ組紐でループ数7を使って組む場合、ループ数5の場合と構想は同じでループ数が異なるに過ぎないものがあ る。その場合は径路図は5ループの場合と同一であるが径路上の要素の数及び配置が異る。径路図が同一であれば基本構造が同一であるから同種として 扱われるが、組織が異なるために外観が大きく異なる場合があることに注目して欲しい。
(写真1)
上から順に
5ループUO(oo)
組成中上に来る面
(5要素4畝平織組織)
組成中下になる面
(5要素2畝綾織組織)
7ループUO(oo)
組成中上に来る面
(7要素4畝綾織組織)
組成中下になる面
(7要素2畝綾織組織)
#1. Makusua (maize flower, トウモロコシの花)
4要素平織組織筒状組紐=丸四つ(写真2)
ループ数:4
ループ1本を1要素とする。S傾斜およびZ傾斜の手綱柄と縦縞柄の色配置。
最も基本的な組紐として広く知られる4要素丸紐であるが、ループ操作技法の組成法としては初出である。
対角点に配置した要素を交互に交換する世界共通の丸四つ組の組み方を、指操作に適用したものといえる。
トウモロコシの花という名前は日本で「すず菜」とも呼ばれるこの紐に共通する発想である。
#2. Wayanatouya (Wayanata は「板切れ」といった意味)
8要素不正規組織2連2畝平組紐
(写真3)
組紐の種類及び手順として初出。(図4)
ループ数:4 両面の3畝が共にS/Z/S 傾斜の他に類を見ない組紐である。
即ち、表裏がない組紐で、左側の2畝が4要素2畝平組紐、右端の畝が裏側の4要素2畝平組紐の畝からなる。右畝の左側に陥没した1畝が通る。2枚の4要素 2畝平組紐がずれて重なリ、重なった部分の畝で繋がっている。
#3、#4、#5が同類として命名されているのは、2畝7要素平組紐を共有する外観(組成中の下面)と、類似の組成法に基づくのであろうか。
(写真4)
上2本
#3は7要素2畝綾織組織平組紐
正規組織組紐、
つぎの4本
#4,
2本の7要素2/4綾織組織平組紐がずれて重なる不正規組織組紐である。
その次2本
#5
2本の7要素1/5綾織組織平組紐がずれて重なる不正規組織組紐である。
#3. Yaliwanasu (ネズミの尻尾) 第1種 (註5) 第2法として初出。
7要素2畝平組紐=7要素蛇腹組 (図5)
ループ数:7 ループ1本を1要素とする組み方。
トルマッシュ技法では第1法を使い、ループを「開」移動するが、こちらは第2法で、ループ移動は「閉」である。
#4、#5は、シュパイザーが第1法ループ数5の場合で理論的に存在が考察されていた組み方に相当するがワヒラは第2法、ループ数7、 「閉」で実行 していることになる。(註6)
#4と#5はループ数が7であるため生じるバリエーションで、ループ数5の場合には同一手順になる。
#4. Yaliwanasu (ネズミの尻尾) 第2種 第2法
14要素不正規組織組紐 初出
ループ数:7 2本の7要素2/4綾織組織平組紐の複合
#5. Yaliwanasu (ネズミの尻尾) 第3種 第2法
14要素不正規組織組紐 初出
ループ数:7 2本の7要素1/5綾織組織平組紐の複合組紐
#6. Kauleruuya (牡山羊のイチモツ 第1種) 第2法
14要素綾織組織筒状組紐=角組(註7)(写 真5 上2本)
ループ数:7
第2法正規組織組紐基本3種のうちの一つの角組で、ループ移動は左右とも「閉」である。
#7. Kauleruuya (牡山羊のイチモツ 第2種) 第2法
7ループ7要素2畝綾織組織平組紐2本同時
(写真5 上から3-4本目)
#6と同様、第2法正規組織組紐基本3種のうちの一つで、ループ移動は左右とも「開」である。
#7を利用する「編み=網」手法
#3、#6などと組み合わせて種々の網を作るとある。挿図によれば、本紙概報のレース技法によって組成される編み組織に通じるものが見え、複数組手による 共同操作が考えられる(註8)。 これを実際に一人で組むか複数人員で組むかには関係なく、ループ指操作技法として一人組の限度を超える技法、即ち連結技法である事には変わりがない。過去 に行われていた複数組手による「連結組」の技法が、現代も行われている事が明らかになったのは、ニュース第8号(2005)の日下部啓子のインドネシア、 スラウェシ島の2人組技法の採録報告による。本報告を複数人組技法の報告第二弾とていいのではないだろうか。
#8. Washaloutaya (縞トカゲ) 第2法
14要素4畝綾織組織平組紐(写真5 下3本)
ループ数:7
第2法正規組織組紐基本3種のうちの一つで、ループ移動は片方「開」、他方「閉」である。
#9. Ko'osu (輪またはループ この名前の意味は不明) 第2法
14要素4畝綾織組織筒状組紐=角組
ループ数:7 #6. Kauleruuya の色変わり。3本に濃淡の2色ループを使い4本は濃色1色にする。
2色ループの作り方はペルーなどで使われている方法と同じ。
#10. Pototsu (平紐 第1種) 第1法
(図6)
(写 真6)
ループ数:7
移動ループを一方は「開」他方は「閉」で取る。
この組み方の可能性もループ数5の場合をシュパイザーがその著書で指摘している(註9)。
世界に広く分布しているUO(oo) = UO No.1 (「開・開」で取る)、UO(cc) = No. 2 (「閉・閉」で取る)に対して「開・閉」で取るこの紐は実在組紐として初出である。
#11. Pototsu (平紐 第2種) 第1法 UO(oo)
組成中の上面が4畝(1沈/2越/2越/1沈)組織、下面が2畝(3/3)組織の2重組紐。上面の平組紐がループ数5では平織組織、7ループの紐では綾織 組織になるため外観が非常に異なる。(#5の4畝平組紐の組織(1越/2沈/2沈/1越)とは異なるので注意)
#12. Kulenaki'iya (手綱) 初出
(図7)
(写真7)
ループ数:8 第2法による「2畝6要素平組紐2本同時」と「平行2本撚り糸」の組み合わせである。
トルマッシュの「麦の穂」(Green Dorge、第1法に基づく6ループの「4畝4要素筒状組紐」と「2本撚り糸」の組み合わせ)よりもル−プ数が2本多いために幾分か手が込んでいるが、類 似構想である。
こちらでは平組紐2本、トルマッシュでは角組が耳組織として2本撚り糸の中畝を引き締める。後者では角組を使うために、紐の上面と下面に不均衡が目立つ が、ワヒラの方法では平組紐2本同時を使うので不均衡が少ない。
ワヒラが用いている手法の評価
1: 手順としても、組紐の種類としても初出のもの 5例(#2,#4, #5, #10, #12)
2: 手順として初出のもの 2例(#1, #3 )
3: 既知のレパートリーにあるもの 5例(#6, #7, #8, #9, #11)
この中で3例(#4, #5, #10)はシュパイザーが不正規組織組紐(UO)の第1法でループ数5の場合の可能性として 検討している構想の、第2法、ループ数7の場合に相当する(註8)。
更に1例 (#4)はループ数5のループ組紐がシベリア在住のハンティが使用している可能性が推定されていたが確認されていない手 順に対して、第2法、ループ数7の場合が実行されていたことになる(註10)。
ワヒラが用いている手順には、編者が知る限りに於ては記録にないループ組紐手順が多数ある。
これまでループ指操作技法の可能性として第1法で理論的に存在が考察されていた組み方と同構想の第2法を用いた組み方は、技 法発展の歴史的経過を目の前に見る思いがする。更にアジアのみに分布するものかと思われた第2法が南米でも用いられていること、これまで第1法の組み方の みで知られていたUO組紐が第2法でも組まれているなどの新事実は、我々の視野を大きく広げるものである。WARE'KER のループ 操作技法研究への貢献は多大である。
謝辞:この本の事を知らせて頂いた、Eduardo Portillo 夫妻とPeter Collingwoodさん, オンライン情報のダウンロードを手伝って頂いたDusty Hellmannさん, スペイン語の翻訳で御忠言を頂いたMarilyn Martinさん に感謝する。
新浮上 鎌倉円覚寺所蔵重要文 化財「角平打組紐残闕」木下雅子
はじめに
鎌倉円覚寺の開山無学祖元の示寂720年を記念して「鎌倉円覚寺の名宝」展が東京都世田谷区上野毛の(財)五島美術館で開催され、これまで山門外不出の 「開山箪笥」及び4箱の「伝衣箱」に収納される主として鎌倉時代から室町時代の染織文化財が展覧された(2006/10/28-12/3)。中に鎌倉時代 の組紐が出展されているとの知らせを得て飛んで行った(註11)。 明らかにクテ打組成の中世組紐の特徴を備 えた組紐である
図録には次のように解説されている。(註12)
「太めの麻撚り糸を芯とし、白・黄・鶸・淡紅・紫の練絹の甘撚り糸を角平打に組んだ組紐である。更に組んだ二本の組紐を覆うように白・鶸・淡紅の練絹を甘 撚りにし、一部の鶸糸はやや強く撚った糸を角平打ちに組んでいる。このように二本の組紐を更に組紐で覆う形態は珍しく、どのような用途に用いたのかは現在 のところ不明であるが、紐の両端が元の二本の組紐に別れているのを見ると、あるいは鈎紐台座に付けて袈裟を掛けるための袈裟紐として使用されていた可能性 がある。(小山 )(註13)
新浮上組紐の概要
新に浮上した中世組紐(仮に「円覚寺の組紐」と呼ぶ)には、図録と展覧会場での観察に過ぎないという限界があるが、幾つかの顕著な特徴が見える。
紐には長い2片と極く短い1片があり、幅:1.3 cm, 厚さ:0.7 cm, 丈はそれぞれ7 cm, 52 cm, 62 cmである。長い2片はそれぞれ別箇に組成されたのものであり、短い1片は52 cmの片の2本に分かれた端の一方から落脱したものと見える。実像は図録83ページを参照して頂きたい。
既知の資料に見られないクテ打の制作法が用いられている。
これまで存在が知られているだけであった芯糸と組紐の実体との関係が始めて見える。
既知例に見ない色柄相を持ち、色糸の用い方も例を見ない。
この組紐の名称として「角平打」が用いられているが、ここでは構造を明確に表す用語として、中の2枚には6畝綾織組織平組紐、外回りを覆う組紐には12畝 綾織組織筒状組紐を使うことにする。全体としては4層構造3人連結組の1種である。
ここで、4層構造3人連結組という名前を簡単に説明しよう。
日本の中世組紐は編者が江戸時代後期の文献から復元し、クテ打と命名した技法によって組成されたものとする。(註14)
(図8)
ク テ打の基本的技法では、角組(2層構造)を縦に2本つないだ組紐、角組を上下に2本並べ、或いは平組紐(1層構造)を上下に4本並べたものを同時に組むな ど、組紐を4層構造として組成する機構が特徴である。(図8,1列)
現存する中世組紐中に見られる十指に余る分厚いの組紐は、これ等の手順を使って複数の組み手で連結し たものである。これ等の組紐には数種類の基本的一人組の4層構造手順を、2人(図8, 2-3列)、3人(図8, 4列)、4人で組み繋げる多くの可能性が駆使され、構造、色柄のいずれかにお いて全て異なる様相を持っている。今ここに既知の紐に用いられた事がないクテ打の可能性を用いた組紐(図8,4c)の出現をみて、感嘆の念を禁じえない。
平行に置かれた2本の紐の色柄相はほぼ対称的に並んでいる。共に組目が同方向に向かっているから、2本の紐は元来1本であったものが2本に切れたものでは なく、一対の紐として組成されたものである。面白いのは、2本が殆ど鏡像に残欠を残している事で、何らかの構造的な要因が関係しているのではないかと思わ せる。中央部分の全長の約3分の1程の部分の4箇所に数cm、1箇所にはその約2倍の長さの筒状組紐の残欠が並び、残欠間の隙間から中の平紐が見える。筒 状組紐が中央部分を覆って1本の紐にまとまっていたものだろうか。或いはもともと隙間が空いていたものかもしれない。両端の20 cm程は平紐2本のみで、筒状組紐に包まれていた形跡は見えない。この形態から袈裟紐であった可能性が強い。
平紐は4本ともに組目の乱れが目立つ。平紐の中1畝又は2畝に芯糸が組み込まれているのが観察できる。
組成技法について
こ の組紐は一幅が6畝組織の4層構造であるから、関連組紐として平安後期のものとされる大阪四天王寺蔵国宝「伝聖徳太子懸守の紐」(懸守の紐) ーー2連角 組を3人で繋いだ4層構造6連角組ーーがまず頭に浮かぶ(図8, a4)(註15)。
しかし円覚寺の紐の構造は2本の6畝平組紐ーー1層構造 x 2ーーとその外回りを覆う12畝筒状組紐に分かれているから、鎌倉期のものとされる京都知恩院蔵善導大師立像胎内納入紐の一つである丸組紐(知恩院の 紐)ーー横に並ぶ角組2本(2 層構造)を8畝筒状組紐が覆うーーと同構想の組成法で作成されたものと考えるのが妥当である(図 8,3d)(註 16)。「知恩院の紐」は2人組だから断面の形が四角(丸)なのに対して、こちらは3人組であるから長方形である。「懸守の紐」組 成の構想 が平安期に始まるのに対して、これは鎌倉時代(以降)と考証される組紐に見られる構想である。
この構想では、組み手がそれぞれ偶数本のループを手に持って組む(註17)。例えば、「知恩 院の紐」は2人の組み手が両手それぞれにループを10本づつ持って連結組を行う。ループ10本と言う事は要素数にして20本である。即ち「知恩院の紐」の 要素数は:
組み手 1人につき 20x2=40 2人で合計 40x2=80 本 になる。
3人組の紐の場合は:
要素数=偶数(各組み手の片手ループ数)x2(ループの足数)x2(両手)x3(組み手数)= 偶数 x12
が期待される。
この紐が齎した新事実
1. 中世組紐の芯糸の入れ方の問題解決への糸口
イ.中世組紐の中に芯糸が入っている事は既知の事實であったが、この紐には2本のやや太い麻芯糸(図録解説に基づく)が3本の平組紐の端に2本づつたれ下 がって残っている。
ロ.この芯糸は元来2本のみで、多数あったものが欠落して2本のみ残っているのではない。
ハ.芯糸は平組紐の全長にわたって中の1畝或いは2畝に組み込まれている。
熊野速玉大社には両面亀甲組紐であったと思われる、組織がほぼ完全に欠落して芯糸だけになった組紐残欠がある。それにまつわりつく多数の絹糸の切片が観察 され、芯糸が組織に組み込まれていた事が推察された。今回出現した紐において芯糸が組み込まれたものである事が始めて実見されたのである。但し両面亀甲組 の芯糸は2本だけではなく多数あり、円覚寺の紐の例で全てが解決するものではない事を示唆する。
2. 芯糸に基づく要素数計測の可能性
芯糸は色糸と同様に組織の中で目印になる糸であるから、よい条件のもとでは、芯糸が中畝の何段目事に組み込まれているかを数える事が出来る。その結果から 要素数の計算が可能である。この組紐の場合は組目がひどく乱れているので、目測では確実なことはわからなかった。
例えば、
イ.芯糸が組目の3段毎に組糸と共に組み込まれているとすれば
紐の要素数は 6 x 12 = 72、ループ数にして36 である。
絹糸要素は72本(ループ36本)。
芯糸4本(ループ2本)は要素ループに合わせて組み込むので、別勘定になる。
ロ.4段目毎に独自で組み込まれていると仮定してみると
要素数は 8 x 12 = 96、ループ数にして48 である。
絹糸要素が92本(ループ46本)、芯糸要素が4本(ループ2本)である。
3. 芯糸の組み込み方推定
イ例 要素数が72の場合:
芯糸を要素ループとは別のループに仕立て、組はじめの時点では中間に位置する組み手が両手の最内側のループに合わせて持つ。連結する時には絹糸ループのみ を隣の組み手に送り、芯糸は受け取ったループに合せて自分の手のうちで組む。即ち、芯糸ループは常に中の組み手の手中に残る。
ロ例 要素数が96の場合:
芯糸も独立した要素として組み込まれる。初期配置では中組み手の両手の最内側のループとし、芯糸を組む段では連結しない。
上記は芯糸が平組紐に組み込まれている様相の展覧会場における肉眼観察に基づいて推定したものにすぎない。拡大写真で組織の詳細を観測することができれ ば、芯糸の組み込み法、正確な要素数などが見込める。
4. 中世組紐には紐の本体を形成する要素には関係のない、細い強Z撚り絹双糸が(1本)入っている場合がある(註18)。
図録83ページ掲載の拡大写真に、細いZ撚り双糸が組み込まれているのが認められる。外の数ヶ所に見える数本のほつれ糸にも強Z撚り絹双糸がまじっている が、組糸との関係は不明である。
紐の本体に用いられている弱S撚り糸に混じる強Z撚り双糸の存在は今だに謎であるが、引き続き行われている小村等の探求に一つの資料例になるであろう。
この紐が提供する幾つかの技術的問題点
1. 2層組織部分(中2本の平紐だけの部分)と4層組織部分(筒状組紐に覆われた部分)間の転移の問題。
従来知られていた中世組紐資料では1本にまとまった紐を作る事を目的とし、クテ打技法によって複数の紐が同時に組成できる機能は活用されていない。「円覚 寺の紐」ではその機能を積極的に利用し、4層構造の内部の2層がある時には2本の紐として、ある時には外周の筒状組織に覆われて1本の紐になるように作ら れていたように見える。袈裟紐から起った発想であろうか、新しい方向として注目されるべきであろう。
しかし、クテ打では使用要素の全てを使って複数の紐を同時に組成するの で、中2本の紐だけを組もうとすれば技法的な無理が生じる。もし敢えて組むとすれば、外回りの紐を組む要素が組まれないまま紐の外周りに残る事になる。こ れは組成時に要素が一様に緊迫していなければならない技法の要請に反する。もし浮き糸があるままで組んだとしても、その始末が問題になる。この紐の組成法 を考える時に真っ先の解決しなければならない課題である。
2. 色柄の問題 1 筒状組紐部分
筒状組紐部分の色柄としては、長い方の残欠部分に淡紅色に鶸色を交えた綾組織の文様単位が数回の繰り返すものがある。更に数箇所ある短い方の残欠部分に は、そのいずれにも同様の文様ーー上半が鶸一色で、下半分は淡紅色に鶸色を交えた綾組織文様の1単位が占めるーーがついている。これ等の様相から、この紐 には繰り返しを続けたり、繰り返さなかったりする文様を組み出し、さらにある一部分を組む時には鶸色のみであった要素を、つづいて大部分が淡紅色に変えら れるような技法が使われたとみなければならない。
ループ組紐技法で色柄を任意に変えるには、上糸と下糸の色が異なるループ(2色ループ)を用いる色柄反転の方法が広く用いられる。この方法では、色を変換 する部分でループを移動する時に上糸と下糸を入れ変える操作(「閉」移動)をして、上層と下層の色を入れ変える。この時、その組織部分で上下層の要素が中 間層を貫き4層が繋がる。資料には、一見では層の繋がりもその形跡を示唆するほころびた糸端なども見えないようであったが、これは紐を詳細を調べる事が出 来れば判明する事である。
組織拡大写真からは、上層 と下層が繋がっている可能性が示唆される。もしそうであれば上面と下面では色が反転している筈なので、紐をひっくり返してみれば容易にわかる事である。
自在に色糸を挿入できる2色ループ反転法が使われた可能性は高い。
第2の可能性として絣風に要素を染め分ける方法が考えられる。しかし、文様が必ずしも繰り返しでない事、また色が変わる境界線に絣独特のずれが見えないな ど、絣糸を使った可能性は少ないように思えた。
3. 色柄の意図が汲み取り難い2枚の平組紐部分
中の2枚の平紐は全面にわたって紫と鶸、黄などの淡色を地にする不均一密度の霜降りである。要素は紫糸各1本を地糸に混入した合せ糸である。中紐の全長に わたって霜降りの様相は一様に不均一である。中世組紐で、知る限りでは前例を見ない色柄相からは、その意図が汲み取り難い。
でき上がった紐に針で縫い込んだ可能性はない。
4. 組目の乱れの問題
表面を覆う筒状組紐の組目がよく整っているのに反して、中紐の組目が非常に乱れている。紫に染めた糸は退化しやすいが、紐の霜降り風の色相は一部の糸が退 化して失われたために起きる乱れとは全く異なる。全長にわたって組目の段数が数えられないほどの、ほぼ同じような乱れが起った原因は何か、 計り難い。
むすび
「円覚寺の紐」を制作するのに用いられた手法は、知恩院の伝教大師立像納入の紐、奈良西大寺蔵重文大神宮御正体厨子錦戸帳の釣紐、春日大社蔵国宝太刀の佩 緒などの制作に用いられた手法に共通するもので、これらの紐の製作年代とされている鎌倉時代に飛躍的に発展した構想に基づくものと考える。ここにあげた組 紐3例には、共通手法のうちの異なる可能性がそれぞれに用いられているが、「円覚寺の紐」にはこの共通手法のうちの更にもう一つの可能性が用いられてい る。
以前からの問題点の解明の助けになる事実を齎す一方、既知の紐には見られない色柄の様相や組織のムラは新たな問題を提出する。これらは鎌倉時代の技法発展 に関連する構想を探る試みに関係するものかも知れず、クテ打技法の底の深さを伺わせる。将来詳細な組織観察が出来る機会が与えられ、懸案解決への道が開か れれば、この紐のクテ打研究に貢献する事は多大であろう。
謝辞
資料調 査に御協力頂いた(財)五島美術館及び同館学芸員佐藤留実さん、展示を知らせて頂いた梶谷宣子さんに感謝する。
スイス、サンクト・ガレン繊維博物館の中世期 手提げ袋ノエミ・シュパイ ザー
登録番号:32234
丈12cm 幅 11cm. (写真10)
--袋の両面には、金糸と絹糸で刺繍された頭巾を被った女性半身像を載せる5箇の円窓がついている。
袋の周縁には11箇の銀の小鈴が下がり、下端には麻の金糸で作った玉飾りがつく。袋の口の締め紐(口紐)と手提げ紐には凝った組紐が用いられており、口紐 の端には2箇の玉がついている。
--袋の周辺を囲む青と白の縁伏せには織りながら丈夫な緯糸要素でとじ付ける方法がとられている。ループを使う経糸撚り糸手法ではない。
--以下では組紐の事のみに限り、刺繍については触れない。
--目当の組紐は、この愛らしい小袋の中で一番目に立たないものだろう。
手提げ紐部分と口紐は約140 cmの経糸を使って一続きに作られている。
手提げ紐は53 cmあり、両端で16 cm長の2本の枝に分かれる。
技法はループ組紐である。(写真11)
--手提げ紐はループ10本を使って4本の手で組んだ2層4畝組織である。2層組織が両耳では離れている。これは外手では「開」、中手では恐らく「閉」で ループを取ったことを意味する。
--連結には変則的な交換が使われたと考えられる。この方法によれば紐の中線に沿って細い陥没した畝が1本できる。(シュパイザー、Old English Patern Book for Loop Braiding, III1 6 参照)
しかし、これらの陥没畝は紐の中線に沿って走る2本の撚り紐が作る杉綾で完全に覆い隠されている。
紐の組み方は、先ず第3の組手が両手の人差し指に白糸を1本づつかけ、両手を上下に動かしてループを交換する。その開口を横断して他の2人の組手がループ 交換をする。(それから2人は各自綾織組織外側「開」・中側「閉」で組む:編集者挿入) 3人協働は余りうまくいかなかったらしく、撚り紐部分には締まり にムラが有り、糸が切れて繋いだりした痕がある。
--口紐はヨーロッパの資料に最もよく見られる、両手共に「通す・飛ぶ」綾の不正規組織組紐である。
紐の組み始め点がどこにあるのかと組織が逆転する場所を探してみたが無駄骨で、結局一方の端から始めている事がわかった。組み方としては、経切った糸束の 端から25cmあたりの点に、必要長さに経切った白糸をつけ加えて3人組を始め、白糸が無くなるまで組む。その点で残りの10本のループを2分して、5 ループ紐を2本別々に組めば、きれいに枝分かれした紐が出来る。
それから出発点に戻り、残して置いた25 cmのループを2分して5ループの口紐を2本別々に組む。この枝分かれ部分は余りきれいにできていない。残った部分の糸の長さが揃っていなかったり、手ま わしが悪いと決してきれいな仕事は出来ない。
二つの枝分かれ点は袋の上部の両端二箇所に縫い付けられている。このことは紐と袋が同時代のものであることを証明している。
口紐は袋の上の縁に2列並んで開けられた20箇の穴にそれぞれに通し、袋の両端で紐端を結び玉に作って繋いである。
写真11に口紐の二面の組織が異なっていることが写っていて、不正規組織組紐であることがわかる。左側は組成時に上になる面、現代では通常「裏」とする面 である。
結論:この組紐は数多の教会や博物館などに納められて、観賞される日を待っている袋類の典型である。この分析をそれらの組紐を記述する時の手本にしてほし い。
(ノエミ・シュパイザー稿終り)
蔵品Copyright: Textilmuseum St. Gallen, 登録番号 32234
情報提供: 同館学芸 員 Ursula Karbacher、Christina Kaestili
写真10, 11提供:サンクト・ガレン繊維博物館 ©
江陵馬山一号楚墓出土の「し」(註19)中国湖北省荊州博物館蔵
小村真理は中国戦国時代の染織品調査紀行「中国・絹織物を訪ねて」に参加、湖北省荊州博物館で江陵馬山一号楚墓出土品を特別閲覧、握手や佩飾など複数の資 料に「し」組織布を確認した。(註20)又同 館や荊門博物館の考古発掘の展示品の中にも数例の「し」がある 事を確認した。荊門博物館の展示品は郭家崗一号墓出土で、「組」とされていたが、実は「し」である。被葬者の棺木は炭素14年代 測定により時齢2340±170とされる。
中国で「し」と呼ばれていた布は、20世紀初頭以来の考古発掘で主として漢代の出土品中に見られるもので、その組成法はループ操作技法の原理を用いたもの である可能性が高いとされる。(註24)今回、同組織の布が 楚代(8世紀BC- 223年BC)に遡り既に相当量生産されていたことが確認されたことになる。
「し」とは細い絹糸で作られた薄布で、漢代には漆質材で固めて冠り物に用いられている例が多く、紗、羅などと間違われていたこともあったが、布目順郎による細密組織の顕微鏡撮影の観測から撚り糸を基本とする斜行組織「し」 であることが明らかになった。(註21)2 本撚りの糸のより目に対行する撚り糸を通す、これを多数の糸の間で交互に行って組成する斜行組織で、組目が詰まっているものでは平織と見間違える。
「し」の組成法についてはプライスプリット(ply-split = P-S) 技法とl-m組紐技法に相当する2法の可能性があげられている。(註22)ま た同組織のP-S組成のテキス タイルは、P. コリングウッドによってplain oblique twining = POTと命名されている。(註 23)
(写真 12:指操作法で作ったループ数9(要素数18)の例)
「し」は紛れもなくPOT組織であるが、糸が非常に細く、組目が細かいのでP-S技法で組成する事は非常に難しいのではないだろうか。更に P-S 技法で組成したとすると、要素に、例えばZ撚り双糸を使うとすると、下糸に強いS撚りがかかっている筈であるが、布目の顕微鏡写真をみると、下糸に相当す る糸には逆に双糸と同方向の弱Z撚りがかかっている。従って「し」がP-S技法で組成された可能性は否定される。(註24)
他方、ループ操作技法或いはこれと同原理の技法で組成された可能性には否定される要因はなく、双糸の下糸に相当する要素に双糸と同方向の撚りが掛かってい る事にも説明がつく。ループ操作でPOTを組む手順は、1対のループの一方の中に他方のループを通したら半回転捻る操作を多数のループ対に対して順次行う という単純なもので、指操作、手操作のいずれでも実行できる。編者は9ループ指操作の3人組で56要素(28ループ)のPOT及びそのバリエーションであ る8角目レース様斜行トワイニング組織(大葆台出土纓残欠)を非常に能率よく組成する手順を考案し、この位までは1人でも組めることを実験的に証明した。 発掘資料の中に見られるような幅広の布を作るのも多数の組み手を用いれば理論的には可能であるが、証拠がない現状では仮説の域を出られない。漢代を更に数 世紀遡る楚の時代の出土品が多数のあると聞いて驚きを新たにするばかりである。
謝辞:情報を提供して頂いた小村真理さんに感謝します。
(木下)
中世指ループ組紐冊子を制作する私の 試みKimberly Frodelius (註25)
指組紐の中世期の模型制作
The Society for Creative Anachronism (SCA) のhistorical recreationistとして、私は会の書家兼彩飾を受け持っていますが、ヨーロッパ中世の指ループ組紐にも大きな関心を寄せています。最近、15世 紀組 紐の文書のミニアチュアを創ると同時に指ループ組紐研究の先頭に立つロイス・スウェイルスさんへの賞状を作るという機会にめぐまれました。(註26)
計画は、大英図書館蔵ハーレイ手稿本(註27)中の15世紀 の指ループ組紐の組み方中についている飾り頭文字を基にした手 彩色のミニアチュア絵図とスペイン、ボルハの聖母子像祭壇画(註28)か ら取った指ループ組紐を組む聖ルチア像で飾り、そ れにイギリスの指ループ組紐に基づく4本の新デザイン組紐サンプルを加えることになりました。
表彰組紐家
計画はスウェルスさんがSCAに奉仕されたことに対して与えられる最高の賞与であるペリカン級に就任される式で賞状として与えられる冊子作製で、手製本し た8 葉の フォリオからなっています。本はページ一杯のボルハの聖母子像祭壇画の一部分を取った聖ルチア像が入った絵で始まります。口絵に続いてハーレイ手稿中の飾 り頭文 字を推定復元した手で賞与授与の言葉が始まります。表彰文の後に数ページに15世紀イギリスの組紐技法に基づく新デザイン組紐の組み方が続き、冊子の最 後のページには4本のサンプル組紐が縫い付けられます。
できる限り原典のイメージに正確に従うために、原資料のデジタルカラー画像、大英帝国図書館からはハーレイ手稿のフォリオ52rの高感度写真、バルセロナ のAmatller Institute (註29)から ボルハ祭壇 画のカラー画像等を購入しました。ハーレイ本の装飾イニシャルは損傷されれていたので、経験に基づいて推測し、座像の衣装を復元しました。
4本の新デザイン組紐
冊子に貼り付けた4本の組紐は、スウェイルスさんが就任された階級の紋章の意味を反映するものとして制作しました。紋章は、即ち、巣の中でとり囲む ひな鳥を自らの血で養うために胸を嘴で刺す、歴史的紋章学の「慈悲」の象徴としてのペリカンの姿を表します。15世紀の組紐の命名法の習慣に従って新 デ ザイン組紐にも紋章学的名前を付けました。 慈悲のペリカン
Goutty(水滴柄)紐
6 ループ「大麦の穂」手順の色違いです。白5本に赤1本を使って、赤い小玉が白い紐の中線上を点々と走る紐を創りました。白 いペリカンの胸の上に流れる血の滴を表します。Gouttyは紋章学で、水滴型小玉が覆う楯をさします。
Fletched(矢羽根柄)紐
8 ループ鷹の羽柄を6ループに変えて、大麦の穂紐で中央に縦線を組み込む動きを加えたものです。Fletched は、紋章学上の用語ではありませんが、中世期に用いられた矢羽根fletching (feathers)を意味する言葉で、ペリカンの羽根を連想して下さい。
Gules Bordered Ermine(赤地に白貂の縁取り)
7ループ広幅紐の両耳に「大麦の穂」を連結して、赤地の太い縞を「白地に黒の点々」柄で縁取りした3人組の組紐です。こ れはこの賞の受 賞者が被る白貂(ermine)の毛皮で縁取りした赤い帽子を象徴しています。
Lace Fretted (斜 格子)
最後の紐はmascles (トルマッシュではmaskel)紐2本を耳で連結する方法に成功した結果できたもので、紋章学で斜格子柄を意味するFretted(斜格子柄)紐と名付 けました。ペリカンの巣を象徴してい ま す(註30)。
指ループ組紐の将来を保証することに力を貸した人に敬意を払い、且つ過去を遡って探りながら今実験をすると言う種々の関心を一つのプロジェクトに合流させ る事が出来たのを嬉しく思っています。
このプロジェクトの事をもっと知りたい人は、どうぞ、、
http://www.frodelius.com/AlheydisPortfolio/2007-01.html
ここには、冊子の各ページの画像があり、そこから2箇の記録へリンクできます。記録の第一は冊子を創る段階の概観です。もう一つは4 本の組紐作り方を含む、特に組紐についての解説です。また、mascle紐の組み方にたいする疑問を解くための試行の記録を含みます。目下大英図書館と the Amatller Institute から購入した映像のウェブ出版権を得るための手続きをしています。出版権を得た暁にはこれらの映像もここに付け加えられます。
リンク:
・ 四種の新デザイン組紐の組み方: http://www.manor.frodelius.com/AlheydisBoke-FLB.html
・新デザイン組紐はIce Dragon 芸術科学大会のファイバーアーツ部で1等賞を取りました。大会へ応募するために作った制作記録: http://www.frodelius.com/manor/IceDragon/2007-FiberArts-Braids.pdf
(フロデリウス寄稿終り)
イラストL-M 指操作 組紐技法解説シリーズ no. 10
ループ指操作基本事項
解説シリーズno. 10の内容:
ワヒラインディアンの組紐5種
1. 4要素丸組紐
2. 8要素不正規組織平組紐
3. ネズミの尻尾(7要素2畝平組紐)
4. ネズミの尻尾バリエーション1
5. ネズミの尻尾バリエーション2
ループ操作組紐を記録 するためのしおり
これはたまたま、民俗的に伝えられたループ操作組紐を知っている人にであったときに、記録を取るための要点のリストです。記録が取れたらセンターまでお知 らせ下さい。
†ループ操作組紐技法関係の活動
予告: 2007年1月より 2008年3月まで
組紐国際会議(2007年11月12-16 日)が京都工芸繊維大学伝統みらい研究センター主催で開催される。ルー プ組紐関 係では: 基調講演・木下雅子/見るループ組紐の歴史 セミナー・小村真理/包山楚墓出土の組紐について スライドショー・河田泰之/L-M組紐グループ の活動 実演 講習・木下雅子(トルマッシュ技法入門・クテ打入門・クテ打次の段階・他2コース)。高台、唐組台・ハマナカディスクの講習、実演、展示、 見学ツ アーなどが予定されている。ループ組紐の人たちも積極的に参加されることをお勧めする。1日参加も可能。
連絡先: 多田牧子 電話042-592-7767, Fax: 042-593-3204
e-mail : secretary@kumihimoconf.org
URL: http://www.kumihimoconf.org
・出版:L. Swales and Heather Blatt, 'Tiny Textiles Hidden in Books: Toward a Categorization of Multiple-Strand Bookmarkers = 本の中の小裂たち:糸製しおりの分類に向けて,' Medieval Clothing and Textiles 3, Edited by Robin Netherton, Gale R. Owen-Crocker, 出版予定日: 04/19/2007. 出版社 URL: http://www.boydell.co.uk/43832917.HTM
この1万語に及ぶ論文は、現存する栞の図のみならず我々が発見した栞の構造の詳細、中世期の栞の絵のリストを含む。更に幾つかの栞についていた、靭皮繊維 製のものを含むループ組紐(とわかったもの)について解説している。今回の出版にはモノクロ写真しか使えなかったが、何時の日か、我々がこれまで研究し、 また将来研究するであろう手稿本と近代初期の印刷本についている栞の組織詳細を含むもっと色彩豊かなウエブサイトを設立することを予定している。
・講習会、研究会等:
「クテ打による日本古組紐復元研究会(古復研)」
クテ打で組まれたと考えられる日本現存の組紐資料の復元模作を目的に勉強する研究会が、2006年1月に発足、1年を1期として隔月の研究会で研鑽を重ね ている。2007年度(第2期)は2006年度に引き続き正倉院の角組を課題に、復元に用いる絹糸、その染色法などを検討、更に組み技術の向上に努力す る。第2期例会:国際奈良学セミナーハウス 偶数月の第4日曜日(会員制)。木下雅子、文化講演会及び講習「黒羽藩主大関増業の遺産 日本の組紐古法」 11/23/2007 黒羽芭蕉の館 連絡先:〒324-0234栃木県大田原市前田980-1 係・新 井敦史、E-Mail a.arai@city.ohtawara.tochigi.jp ・ 0287-54-4151、 FAX 0287-54-4188
昨年度の活動:(2006年1月より 2007年3月まで)
・出版:E. Benns with G. Barrett, Tak V Bowes Departed: a 15thCentury Braiding Manual Examined, Soper Lane, 2005.(写真 13) R. Owen, 'Interlace Braids: an Overview,' Strands 2006.
日下部啓子 「日下部啓子コレクション 聖なる布の系譜 インドネシア・スラ ウェシ島の染織」展図録、日英 語、福岡市:福岡市美術館、2006.(写真 14)
・展覧会等:春日弘子 白鳳流組紐展覧会でループ組紐コーナーを設けて資料と作品の展示をした。
川辺千佳 代 堺市都市緑化セ ンター 07/3/2〜4 ループ組紐資料・作品展示 'Old English Pattern Books for Loop Braiding' に基づいて作ったループ組紐サンプル集、協力出品依田章子 草木染糸で同書の#5組紐を沢山組んで座布団に形成。(写真15)川辺千佳代 同所 06/3/3ー5 15世紀、17世紀ヨーロッパのループ組紐関連資料、依田章子 2005年奈良でのシュパイザーの特別講座関係資料其の他をパネルにして 展示。「日下部啓子コレクション 聖 なる布の系譜 インドネシア・スラウェシ島の染織」 福岡市美術館 主催 福岡市美術館、読売新聞西部本部、美術館連絡協議会 協賛 花王株式会社 11/1-12/27、 バティク、イカット、タブレット織、ループ組紐等を含む余り知られていないスラウェシ島の染織の名品が展示された。
・講演・講習会・研究会など:古復研 設立相談会(1/21)、研究会(2/19, 4/30, 6/25, 8/27, 10/22, 11/12 古代の角組を課題に、その組成技法がループ操作技法である事の確認及び要素に入れられている撚り等について、参考文献を基にして理論と実技の 両面から研鑽した。
Katia Johansen/コペンハーゲンでKEP(「保存係生涯教育」)の後援で行った一日講習会「シンプルな紐と組紐」の報告:講習会には、博物館関係の染織 品保存係、其の他25名が参加した。
(写真 16)
KEPはデンマーク文化省文化財保存課が協賛する機関である。講習会は私の発案で 2人の同僚、M. H. Jソrgensen と A. Sparrとの協力で計画を立てた。あらかじめ用意しておいた単純なものから珍しいもまでを含む紐や組紐を試作するための部署を準備し、作り方は各部署で 手分けして教えた。参加者は自由に部署を回ってサンプルを作る。スエーデンから来たA. Sparrはヘアー・ブレイディングの名手で、3種類の(台)組紐とディスクを使う単純な組紐を教えた。私は幾つかのslendring=ルー プ組紐とクテ打を教えた。これは大多数がはじめて出会ったものだった。外にレース、タブレット織、固定綜絖、其の他英語名がとっさに出てこない技法など。 参加者に配布した組み方と紐のカラー写真フォルダーには自分で作った紐をサンプルとして入れる。この講習会は好評で今年も開催する予定にしている。美術 館、博物館の同僚達がこの経験から種々の異なる技法からどんな異なる構造が組み出されるかを理解する事にもっと関心を広げてもらうことを願う。またループ 組紐が組まれる現場をみて博物館の蔵品や考古学の発見品中のループ組紐にも気付くようになる事を期待する。講習会の効果として、Joy Boutrupの研究に協力して王立文書館蔵品中のループ組紐の探索がすでに始まっている。
川辺千佳代 3/5 の展覧会にともなう行事として、大西智子協力、ループ組紐体験教室 24名。
小村真理 5/27 国立民族学博物館(大阪府吹田市)特別展「みんぱくキッズワールド:こどもとおとなをつなぐもの」に関連して、ワークショップ「ループをつかって紐を組ん でみよう」が開かれた 参加者子供50人ほど。
加古千恵子 8/6/06 兵庫県立歴史博物館(姫路市) 昨年に引き続き「体験、組みひもを作ろう!」、姫路城のお祭りと重なったためか、定員20名の ところ13名、3ループ、5ループ指操作、青森の久米田さん伝承のブレスレットを毛糸とメタリックヤーンで作った。
西岡千鶴 9/27 群馬県立絹の里博物館.
木下雅子 10-11月 和光市と奈良市で講習会、クテ打基礎技法応用編、トルマッシュ家の秘伝「紐の作り方」シリーズ2、1人で組む連結技法、トルマッシュ斜行縄 連組織組紐技法、実技を通して学ぶ組紐技法の基礎構造と径路図。
河田泰之 11/18 泉南市埋蔵文化センター 協力 春日弘子・川辺千佳代・角浦節子・津森久美子・依田章子、市内小学生の施設見学で体験、368名、ループ組紐 講習 26名、その他ループ組紐の残る出土資料(三田古墳出土鉄剣)の展示などを観察。
日下部啓子 11/25-26 展覧会欄記載の「インドネシア・スラウェシ島の染織」展のギャラリ−・トークでスラウェシ島の鉢巻きポテの2人組9ループ 組紐技法の実演 協力:前川明子 参加者はこのデモをみて興奮の渦に包まれた。
皆さんのl−m技法関係の御活動をお知らせください。
†今年度も、多数の人達から情報を頂いた。ループ操作技法がかつて広く用いられていたのだと言う確信がますます強く裏書きされる。又ボランティアの人たち の熱意によって講習会、実演、体験などのプログラムなどを通して技法が徐々に広まっている事は頼もしい限りである。報告者、ボランティアの方々に厚く感謝 する。
†謝辞:寄稿 K. Frodelius、N. Speiser様;写真映像提供(宗)円覚寺、(財)五島美術館、St. Gallen繊維博物館;情報提供 P. Collingwood、K. Johansen、U. Karbacher、春日弘子、C. K stili、梶谷宣子、川辺千佳代、日下部啓子、小村真理、Eduardo Portillo 夫妻、佐藤留実、L. Swales様;協力献金 相原日出子、永瀬泰博、角浦節子様;ほかメール、手紙を頂いた読者の皆様に感謝する。
†本出版物を商業目的を以て複製すること、また許可なく映像複製をすることを禁じ る。
†L-M BRIC News はループ操作組紐技法の知識と理解 を広ろめるために、 10年間無料で配付してきた。年々集まってくる情報の量が増えて、印刷版の限られた頁数に収める事が困難になったので、本年(2007)から日英両語版共 インターネットの出版のみになった。なお印刷版を希望される方は編集者までお知らせください。インターネット版から印刷して郵送します。
御理解者のカンパは歓迎します。*送付先:振替口座番号 00360 3 2586 名義人木下雅子