L-M BRIC News no. 12 日本語版 2009/6/11 © 2009
ループ操作組紐技法研究情報センター/編集・木下雅子
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L−M BRIC ニュース 第12号
註
<凡例> 註 著者註 編註 編集註
編註1. Pitt Rivers Museum, Oxford University, Oxford, UK: 登録番号2008.67.1 1956年・Parry Okeden 嬢の贈品
編註2. The Braid Society Newsletter no. 60, March 2008.
編註3. N. Speiser, Old English Pattern Books for Loop Braiding (略称OEPB), Arboldswil: 自家出版, 2000.
編註4. L-M BRIC ニュース 第8号
編註5 出版の詳細については本号の2009年活動欄参照
著者 Noémi Speiser = ノエミ・シュパイザー氏は組紐研究に半生を捧げてこられた権威である。氏の著書にはgThe Manual of Braidingh, gOld English Pattern Books for Loop Braidingh 其の他がある。
編註6. ローマ字化においてトラジャ語の独特の発音を表記するために用いられるアポストロフ記号は、ウエブ上の記号と衝突するため省略する。
註1. サッダン・トラジャ人が居住するタナ・トラジャ県 Tana Toraja Regency は2008年11月タナ・トラジャ県 Tana Toraja Regency と北トラジャ県 Toraja Utara Regency の二つの県に分離、独立した。本稿では両者を指す場合トラジャ両県あるいは単にトラジャとする。
編註7 トラジャ社会はかつて政治的な全体的統合をみたことがなく、伝統的に南部、西部、北部の三つの慣習的領域 (traditional territories)が設定されていた。この慣習領域の分類は首長の呼称に基づいており、その呼称は上記順にプアン(puang)、マディカ(madika)、シアンベ(siambe)という。現在も各地域の伝統が存続している。郡名の前に着けた南部、西部、北部とはその郡が県内のどの領域内にあるかを示す。また郡名の後につけた番号は地図上の位置を示す。
編註8. これらの本稿で用いる3種の組紐名称は構造的名称としては、順に4畝綾織組織筒状組紐、4畝綾組織平組紐、2畝綾組織・平組2本同時に相当する。これ等3種の組紐はループ操作組紐が用いられている大多数の地域に存在する。組成に用いられるループ数によって要素数が異なっていても、基本的には同じ構造なので、3基本組紐とし、その3種を組む手順を3基本手順とする。
註2. ループ指操作組紐技法ではループ数に5, 7など奇数を使うことが多いが、4, 6などの偶数でも同基本構造の組紐が組める。ママサのB村ではループ数4、T村では8など偶数のケースが採録された。但し、ループ数5, 7の奇数の場合は4畝の越数は2/2/3/3、3/3/4/4で、紐の断面は梯形になるが、ループ数偶数の角組では4では2/1/2/3、8では4/3/4/5になり、断面は不等辺四角形である。特にループ数4のものでは断面は三角形に近い。
註3. スイスの組紐研究者シュパイザーはOLD ENGLISH PATTERN BOOKS FOR LOOP BRAIDING (OEPB)中に2連角組紐を A double interconnected square braid (p. 25) あるいは Two interconnected square braids (p. 47) 「2本の角組が結合した組紐」と定義している。(編註3参照)
註4. 2007年1月8日付け及び、2009年5月5日付け私信
註5. プアンという首長の家族が支配する南部の3地域サンガッラ、マカレ、メンケンデックはタッル・レンバングナ(tallu lembangna = 三艘の船)と呼ばれる連合体を形成していた。
註6. 2点の袋の内1点は木綿の袋(ブンタオ郡で使用といわれる?)(L-M BRIC ニュース 第9号)、もう1点は2008年観察したパイナップル繊維による袋(サンガラ郡で使用)である。
註7. バルス地域は北部にあり、本シリーズ2で取り上げたサダン地域の東に隣接する。2人組及び3人組と考えられる多種の組紐で構成された「縁取り」を持つ祭司の儀礼服(L-M BRIC ニュース 第9号、写真2)は、バルスで使用されたものであることが2008年に確認された。その12畝綾織組織平紐とレース組織部分は15ループ組成3人組と考えられる。従って2連角組部分は10ループ組成である可能性が高い。バルス地域では今でも一部で、葬儀の最中婦人等がマ・ロンデ (ma londe) という詩歌を詠いながら、遺体を縛る3本の紐を組む風習が残っているなど、従来からループ組紐が盛んな地域であったことが窺える。
編註9 L-M BRIC ニュース 第8号 本シリーズ第1回
註8 サルプティ地域ではベケは腰紐を表し、頭部用鉢巻をタリカ(talika) と呼ぶ。
註9 Irene Emery, The Primary Structure of Fabrics, Textile Museum, 1980, p. 31; 梶谷宣子、「アンデスの織物」、 染織の美 20、1982, p. 94; 堀内紀子、一本の線から -- from a line, 染織と生活社、1986, p. 59; 鈴木三八子、織物構造図典、 日本織物文化研究会編集、2005, p. 398.
註10 上記 Irene Emery, p. 53; 堀内紀子、p. 432.
註11 これらの先端と中間にある2連角組の組成要素(或いはループ)数が特定できないのは、組端が見えないことが第一の要因である。さらに組紐が非常に固く組まれているので、作品を傷つけずに内部をみることが困難であったこともある。
註12 このポテの組織が8畝綾織組織筒状組紐であるのは、2人の組み手が連結操作及び中手操作で上下層が2層に分かれる様な操作(「開」操作)を行ったからである。
編註10 2連角組の断面は巾広の梯形で、その広巾の上下面の巾が異なる。ここの「巾の広い(又は狭い)面」とは、2連角組の広巾面の巾が広い(又は狭い)方の面を意味する。
註13 土着宗教の葬儀礼で棺を墓に納めた3日後泥染め儀礼が行なわれる。トラジャ南部、北部ではこれをマッボロン(ma bolong)と呼び、西部サルプティ郡(14)ではマンルルック(manglulluk)、レンボン郡(20)では両方の用語が使われているのを記録した。一方トラジャ両県の西方、ママサ県では泥染め儀礼をパッルルカン(pallulukan)と呼ぶ。manglullukとpallulukanの二語は語根 elulukf(「黒く染めること」)が共通している。 従ってトラジャ西部はママサの文化の影響も受けていることがわかる。 (Buijs, Kees, Power of Blessing from the Wilderness and from Heaven, p. 75-76, 2006; 日下部啓子、スラウェシ島の染織;サッダン・トラジャ人、ママサ・トラジャ人の儀礼的染織、pp 79,109-110, 2006; Nooy-Palm, Hetty, The Sadan-Toraja, 2. Rituals of The East and West, pp 241-2, 274, 287-8, 1986.)
註14 インド~ = Indo ~は「~のお母さん」という意味である。トラジャでは子をもつ父母は通常第1子の名前で呼ばれる。父はこの地方ではアンベ~ = Ambe~ 。「パパ~」「ママ~」という言い方も若い人の間では一般的である。一方ネネ~ = Nene ~は「~の祖父あるいは祖母」を意味する。トラジャ語で祖父と祖母の呼称の区別はない。 一般に「インド~」という呼称は尊敬を表すと言われ、好まれる。
註15 「レッテンはその詩を創作した人によって詠唱される即興的な詩である。」
「レッテンは葬儀で死者の歌、バドン(badong)が歌われている時、その歌の中の自由に選ばれた箇所に挿入され詠唱される」またレッテンはメロック(merok)、ブア(bua) などトラジャの祝祭儀礼でも詠唱される。
Veen, H., van der, The Sadan Toradja Chant for the Deceased = サダン・トラジャ人の死者のための詠(歌), Verhandlingen van het Koninklijk voor Taal-, Land- en Volkenkunde: Deel 49 =(オランダ)王立東南アジア・カリブ海研究所論文集第49輯, p.16-17, 1966.
註16 1920年頃のスウェーデン・ダーラナ Dalarna で指導者のもとに3人の組み手がループを交換しながら組紐を組んでいる写真が知られている。(OEPB p. 33、北方民族博物館/Nordiska Museet)その後のJ. Boutrupの調査でこの組紐は不正規組織組紐であると報告されている。この時行なわれていた連結法は同時交換法と想定されている。(L-M BRIC ニュース 第6号)
註17 N. Speiser, The Manual of Braiding, p. 129,1983; p. 78,1988, 1991. これは2人の組み手が内手操作とループ交換を連動して行う方法で、OEPB, p. 24にも記載されている。図示の方法では、角組を例示しているので連動する操作としては必然的に2連角組を組む手順になる。なお、ループ指操作技法には人差し指操作と小指操作のものがあるが、連結法はその何れにも適用できる。
註18 M. Kinoshita, eTwo –person Loop Braiding Procedures Converted for Working Alone,e Strand Issue 12, p. 20, 2005.
註19 平組紐の場合は9本のループを用いることで組織中の1越の不整を正すことが出来るが、2連角組ではループ数10の場合よりも不整な構造になる。