L-M BRIC News 日本語版イラ ストL-M組紐技法解説シリーズ      2010/5/30 © 2010

ループ操作組紐 技法研究情報センター/編集・木下雅子< /span>

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L-M BRIC ニュース第13号

 

 

イラストループ組紐技法解説シリーズ 第13回

 

Illustrated L-M Braiding Instruction Series; No. 13

 

 

経縄連 組織組紐3種

 

 

数本の撚り 紐を並べ、その撚りの半回転毎によこ糸を組み込んで連結して組成される平紐は、縄連組織帯紐として、 カード織、綾竹組、源氏系統組紐、斜行縄連組紐(ささなみ組、唐組)などに華麗な発展を見せる発想の萌芽と考えて良いだろう。

本シリーズ では既刊のニュースに紹介されている経縄連組織組紐の萌芽ともいえる、並行する2本の撚り糸を連結して組成するループ数4と8の組紐にループ数6の類似例 を加えて取り上げ、その相違、それらから導出できるバリエーションなどついて考えて見よう。

 

用語につい ては、イラストL-M組紐技法解説: シリーズ 入門編を参照

 

内容

1. ループ数4:カルルスルーエ出典の紐#2(ニュース第 6号/2003/イラストL-M組紐入門シリーズ第6回< /span>

両手の人挿 し指と小指を使って組む。伝統組紐の8玉「並び角八つ」と同構造の角組紐。

2. ループ数6:トルマッシュ「紐の作り方」#38「Green Dorge」紐。この名称はフランス語 "grain d'orge(オート麦)”が訛ったもので、中畝に麦粒型の組目が2列に並んでいる。日本語名は「麦の穂」としたが、伝統組紐中にに見られる「麦の穂」と 言う名前の紐は組目が入れ違いになっていて、麦からの連想が異なることがわかる。

3. ループ数8:ワヒラの組紐「 Kulenaki'iya(馬の轡綱=手綱?)」(ニュース第10号/2007< /span>)。ループ 数が8なので空き指がないための仮置き操作が加わるためにわかり難い部分があるが、本来は単純な手順である。ワヒラの人々はこのような手綱で馬(ロバ)を 飾る。

手順

1. カルルスルーエ出典の紐#2(カルルスルーエ8要素平行縄連角組)

ループ 数:4

ループ初期 配置: 左右の手の指 a, d にループを1本づつかける

組み方:

操作1 左 手dで右手a のループを 「開」で取る

操作2 右 手aで左手dの、今取ったループをを越して始めからかかっていたループを「開」で取る

組織を緊迫 する

操作3 右 手dで左手aのループを 「開」で取る

操作4 左 手aで右手dの、今取ったループを越して始めからかかっていたループを 「開」で取る

組織を緊迫 する
fig. 1-1

 fig. 1-2

 









8要素平行縄連角組作例  

Karlsrhue 3本上: ld、ra 及び la、rd の対がそれぞれ 同色

中:  la、ld 及び ra、rd の対がそれぞれ 同色

下:  ld、ra 黒、   la 白、  rd 赤、    la, rd は ld、raの約4倍の太さ

 

 

 











2. トルマッシュ#38 麦の穂 (Green Dorge = Grains d'Orge)

ループ数:  6 

ループ初期 配置: 左右の手の指 b, c に同色のループを1本づつ、異なる色のループを右手d指に、更に第3の色のループを左手のa指にかける

組み方:

fig. 2操作1 右手aを右b、c に通し、左cを「閉」で取る

左bのルー プをcに差し替える

操作2  左手bを左cに通し、右手cを「閉」で取る

右bのルー プをcに差し替える

操作3、4 はカルルスルーエ操作3、4と同じ

 糸を引っ 張って組織を緊迫する

繰り返す

 






麦の穂の作例

green dorge上 木綿刺繍糸 la 赤、rd 緑、

   lb、lc、rb、rc 青

下  毛糸刺繍糸 la 水色、rd 柿色、

  lb、 lc、rb、rc 焦茶

 

 

 

 

 



3. ワヒラ  手綱  (Kulenaki'iya  馬の轡綱)  

 

ループ 数:8 

ループ初期 配置:8本の指にループを1本づつかける

初期色配 置:左手a、b、c、右手b、c、dに同色地色 左手d、右手aに対象色2色

 

kulenakiiya操作1:左手cを右d、cに通し右bを「開」で取る

操作2:右 手bを左cの今取ったループ(左c2)、左c、bに通し左aを「開」で取る

(ループ差 し替え)左c2を一時右手bに預けて、左b、cを左手a、bに差し替える。次いで、右手bに預けた左c2を左手cに戻す(左c2は左cになる)

(ループ差 し替え)右bを一時左手bに預けて、右c、dを右手b、cに差し替える。次いで、左手bに預けた右bを右手dに移す

糸を引っ 張って組織を緊迫する

操作3:左 dと右aを(一方を他方の中を通して)交換する

糸を引っ 張って組織を緊迫する

繰り返す

 

馬の轡綱作 例

klenakiiya 木綿刺繍糸

 ld、 ra 薄紫、 la 白、 rd オレンジ    

 

 

 





 

技法解説

「カルルス ルーエ8要素平行縄連角組」では、操作1,2で1対の互いに逆撚りの紐が形成される。操作3, 4でも同様に2本の逆撚り紐が先の2本を挟んで形成され、この2本が横連結される。即ち操作1,2と操作3,4で、2対の撚り紐が、互いに横連結される構 想である。

「麦の穂」 では、操作1,2で、両手のb, c指にかかる4本のループを使うループ「閉」移動の手順で角組が組成される。必ずしも人差し指を操作指にしてはいないが、ここで角組を組成するループグ ループの配置では「外指」に相当する指を使っているので、l-m組紐第1法が使われていることがわかる。

「手綱」で は、操作1, 2で、左手の指 a, b, c 右手の指 b, c, d に掛る6本のループをを使い「開」移動する、6要素2畝平組2本同時手順が使われている。操作1では「内指」即ち小指操作法を用いていることが明らかであ るが、操作2ではrdがふさがっているので、代わりにrbが用いられているために「内指」操作であることが明瞭でないが、このループは次いでrdに移さ れ、即ち l-m組紐第2法であることが確かになる。

「麦の穂」 「手綱」共に、操作3で操作1, 2で組んだ紐を挟んで、2本のループを交換する。共に2要素が撚り合わされた逆向き撚り糸2本が組成される。

つまり「カ ルルスルーエ8要素角組」は2対の撚り紐、「麦の穂」は、1対の撚り紐と角、「手綱」は1対の撚り紐と1対の蛇腹組紐が組み合わされた組紐ということにな る。

 

「麦の穂」 では、角組にループ数4を使っているので、畝の越数が2321という不整、「手綱」ではループ数6の2畝平組なので、一方の畝で2越他方では3越の不整が ある。そのために両者共に左右の耳の組目が幾分か不揃いになる。

例えば、麦 の穂では左手の小指が空いているから、この小指にもループをかけ、操作1, 2でループ数5で角組を組めば、耳組織の不整が減少する。更に角組を組む変わりに「開」操作で5要素2畝平組2本同時を組めば、左右均衡のとれた紐にな る。伝統組紐の平源氏組の基本型と言える。

「手綱」の 場合もループ数を7に変更して、ループ5本で5要素2畝平組2本同時を組むようにすれば、左右バランスがとれた組紐が組める。

 

以上は、組 紐の歴史的或いは民俗的組成法について、でき上がった組紐を分析し、構造的により整ったものにしようとするための構想である。このように見ることで、ルー プ数を変える、ループの太さを変える、角組、2畝平組などの要因組織を変える等の新構想に発展していく。

しかし、組 紐の見方はこれに限ったものではなく、それぞれの組紐、また組紐の技法には歴史的、民俗文化的な背景があることを忘れないようにしたい。