L-M BRIC NEWS
ループ組紐操作技法を記録する17世紀の印刷本発見
"Natura Exenterata: or Nature unbowelled by the most exquisite anatomizers of her " (最高の巧者による自然の解剖)な る1655 年にイギリスで出版された印刷本の中にループ指操作(F-H L-M)技法の記録があると、ロイス・スウェィルス(註1) から報告があった。(Fig. 1)
スウェイルスのL-M組紐仲間のリーサ・フォーゲルマン(註2)が、編み物 (knitting)の歴史に関する情報をオンライン探索中に偶然に見つけ たとのことである(註3)。
この本は種々の医薬の処方を満載した大冊である。F-H L-Mの手順はその中の一部分(p.410-p.438)に、トルマッシュ本「紐の作り方論」のほぼ全体に相当する内容を含んでいる(註4)。目次によれ ば、染色(p.404-p.407)、網の作り方(p. 407-p.419)などの項目もある。
(Fig. 1 左 編者アラセア・タルボート侯爵夫人 エッチング W. Hollar 1626、
右 NATURA EXENTRATA の表紙)
印刷本が普及する以前に手写して伝えられた記録中で、日常生活の必須技術、薬餌の処方、献立などの記録はHOUSEHOLD BOOKとして知られており、その中に手工芸の技法記録が時折り見出される(註5)。
ヨーロッパのL-M組紐技法の現在知られる記録では15世紀の家政書中に混在しているものの外に17世紀のイギリス上流貴婦人の稽古事のメモ帳と言う体裁 の手記が相当数ある。後者はあたかもこの時期に組紐が貴婦人の間で流行になっていたかのような印象を与える。
17世紀には古記録の出版みではなく、新たに編集した薬餌、献立の本も相当数出版されている。今回発見された"Natura Exenterata"も15世紀の家政書が改訂され版本として出版されたものであろう。
著者はPhiliatros = 科学愛者とされているが、アラセア・タルボート侯爵夫人でむしろ編者というべきではなかろうか。この本の出版の目的が組紐技法であったわけではないだろう が、組紐技法の記録の改訂にも力を入れているのは、上記のような流行の潮流があったのかも しれない。この版のL-M組紐技法の改訂者はエリザベス・セレーン Elizabeth Serene 夫人である。(以下セレーン本とする)
15世紀の記録「トルマッシュ家の秘伝」には、キャスリン・トルマッシュ夫人の署名があるが、E. ベンスによればこの署名の字体は明らかに17世紀のものであるという(註17)。 つまり夫人は 17世紀の人で、理由は解らないが本が書かれて200年を経 た17世紀に署名を書き入れたのだということになる。もしかすると"Natura Exeneterata" を出版するために、頼まれて「秘伝書」を貸し出したのかもしれない。いずれにしても200年後にこの書に特に関心を持った人がいたことが伺われるのは興味 深いことである。
セレーン本とトルマッシュ本との比較 (註6)
トルマッシュ本では、用語は巻頭の第1項目に解説されているが、幾つかの手順に共通する操作、例えば2人組で隣の組み手とループを交換連結する操作は別項 目に解説されることなく、それを使う最初に出てくる手順として解説され、後はその手順を参照することになっている。手順を種別にまとめることもされていな いので、参照事項を見返すのに手間がかかり使いよいとは言えない。
セレーン本は15世紀の記録を改訂したもので、共通操作の解説は用語と共に始めにまとめられており、手順が構造別に所要ループ数に従って順にまとめられて いるので使いよくなっている。
トルマッシュの63の手順中、基本構造とループ数が同じで色柄だけが異なるのものを同一種として数えると手順種は52である。
セレーンには69項目が記載されているが、同基準で勘定すると49種である。同構造色変わりデザインが増え、トルマッシュ本の曖昧で推量困難な組み方を含 む5手順が削られ、新たに2手順が加わわっている。これを更に、ループ数や色柄が異なっていても基本的に同構造と認められる組み方を一つにまとめて数えれ ば、トルマッシュの19に対してセレーンは14である(註7)。
15世紀本と17世紀前葉に書かれた貴婦人達のパターンブックとの顕著な相違は、前者に多数ある斜行縄連組紐(いわゆる「ささなみ組」「唐組」)手順が後 者からは全面的になくなり、その代わりに15世紀本にはない2色ループの反転を使う2人組の柄だし手順が多数記録されていることである。(註8) (Photo1)
(Photo 1 上2本 斜行縄連組紐 下2本 2色ループ反転色糸効果を使った17世紀の組紐 木下雅子 作製 L-M BRIC News (C) 2004)
この傾向に対して、セレーンは15世紀本の特徴をそのまま踏襲し、多数の斜行縄連組紐手順を 掲載し、2人組柄だし技法は全然姿 を見せない。セレーンは17 世紀前葉の傾向に対する古典技法復興への17世紀中葉の動きの一端を見せるものでもあろうか。
(Photo 2a 右 色筒状変り縄連組紐ヴァイスレイ. 2b 左 2畝2重旗竿柄組紐、下 6畝2重旗竿柄組紐. 制作・写真 J. Boutrup (C) 2004)< /small>
しかし改訂者は単に古記録を改訂したのみではなく、古記録にはない創作2手順を加えて、ループ組紐技法への自身の理解と創造性を表示すること を忘れていな い。(Photo 2a, 2b)
イギリスの古記録に見る不正規組織組紐について
現地調査から得たL-M技法の報告によれば、現在の世界の大勢ではループを指にかけて操作する「指操作技法」(F-H)が多く用いられていて、手に掛けて 操作する「手操作技法」(H-H)が用いられているのは、オマン首長国のみである(註9)。
F-Hの中で「掌向かい合わせ・外側指(人指し指)で操作」する技法(第1法)は、主としてヨーロッパ、アフリカ、中南米に、「掌上向き又は向かい合わ せ・内側指(薬指か小指)で操作」する技法(第2法)は、主としてアジア大陸に分布しているようである。
現地調査で採録されたF-H 組成の組紐のレパートリーは、シュパイザーが「組紐三位一体」と呼ぶ3種の正規組織組紐(2畝綾織組織平組紐2本同時、4畝綾織組織筒状組紐、4畝綾織組 織平組紐)と、不正規組織組紐、UO#1及び#2(L-M BRICで 用いている仮称)の2種、合計5種である(註10) 。特にUO#1及び#2の分布は第1法F-Hが使用されている地域には必ず見出されるほどに広範で、場合によってはこの2種、或いは1種しかない地域もあ るほどである。また、地域によっては不正規組織紐のレパートリーがこの2種以外に広がっているにもかかわらず正規組織組紐は全くないようなこともある。
このような第1法F-Hの現代の分布状態に対してF-H第1法の古記録であるイギリス15世紀、17世紀の記録では、正規組織組紐のレパートリーが大幅に 発展している事実に比して、不正規組織組紐には発展が殆ど認められない。トルマッシュ本にはかろうじてUO#1の延長と認められる2人組12ループの旗竿 柄と5ループ及び2人組10ループUO#2の手順があるが、セレーン本ではUO#1系列の紐は全て削除され、UO#2は古来の2手順を載せるにとどまって いる。
正規組織組紐技法が発達した地域では、不正規組織組紐には関心が少なく、前者の発展に伴って無視されて行ったように思われる。
本書は、数々の記録を残しながら17 世紀以後20世紀に至までにかって存在したことさえも忘れ去られていたループ組紐技法のイギリスでの17世紀中葉におけるの歴史の一端を垣間見せるもので ある。
新発見!! インドネシアの指操作 L-M 組紐技法インド・日本・タイ国の技法の流れを汲 む「掌向かい合わ せ・内側指操作」
トラジャ族の組紐/ループ操作技法 (1)ママサ地方2005年2月12日-19日 調査日下部 啓子(註11)
トラジャ族のループ操作技法に出会うまでの経過
1997年以来私はインドネシア、スラウェシ(セレベス)島山岳部に住むトラジャ族の染織品、とりわけ「カード織物」に強い関心を持って島に通い続けた。 中でもユニークな織物、女性用の葬送頭巾「ポテ」は複雑なスリットの入った平織りやカード織りが見られ、さらにボーダーにはブレーディングが施されてい る。これをいつか解明したいと思っていたが、昨年秋L-M BRIC ニュース編集長の木下雅子氏にこの染織品を直に見ていただく機会を得た。その結果それらの組紐の断面の形が「真四角」ではなく「台形」を呈していることか ら、ループ操作による組紐に違いないとお聞きした。それ以前にママサで、あるウィーバーが「足と手による組紐の技」を披露してくれたことがあった。またト ラジャで友人が母親から聞いた話として「指をパタパタさせて糸を操るのをマッ・ カッ・ビッというらしい」と言うのを聞いたことがあった。こ れらの見聞してきた断片的ないくつかの事柄が、この度のリサーチの中で関連付けられ徐々に明らかになってきた。
トラジャ族とその文化
インドネシア・スラウェシ島の南部山岳地帯にトラジャ族が居住している。「トラジャ」とは本来スラウェシの沿岸地帯に住む多数民族ブギス人の言葉で「山の 上の人」という意味で、この島の山岳部にすむ多くの民族の総称として用いられる。しかしここで私が研究対象として取り上げるのは狭義の「トラジャ」、即ち サッダン川の上流に住むサッダン・トラジャ人とその西方のママサ川の上流に住むママサ・トラジャ人に限られている。すなわち彼らは祖先崇拝を信じる農耕民 で、それに基き様々な儀礼を執り行う。それらの儀礼は「死者儀礼」と「祝祭儀礼」の二つのカテゴリーに分けられている。彼らは死者儀礼をもっとも重要な儀 礼と捉え、そこで聖なる動物と考えられている水牛を生贄にする。また様々な儀礼で「聖なる布」を多用する慣習がある。さらに一族の象徴として船形の屋根を 持つ伝統家屋トンコナンを建造する、トラジャ語を共有するなどの特徴を持つ人々である。
今回の報告ではママサ地方のループ組紐技法について述べる。サッダン・トラジャに関しては次回に譲る。
ママサの染織と組紐
ママサ地方では今も婦人たちが後帯機でサロンを織ることに余念が無い。サロンは縞と経文織りで構成されていて、毎週月曜日に開かれるパサール(市場)で売 られ、婦人たちのよい収入源となっている。そのほか特徴的な染織品としてセプ・ススと呼ばれるシリ・バッグがある(註12〕 。この地方では老人達の間で、ビンロウジュの実とシリの葉を用いた「噛みタバコ」の風習が今でも盛んに行われている。セプ・ススはそのために欠くことが出 来ない肩掛け袋である。 袋の中央にはスンキッと呼ばれる緯文織の鉤文様が、またその両側に縞文様を置く。さらに袋の両角には螺旋状の刺繍を施す。袋の口はギャザーをよ せ、そこに 平らな組紐が縫いつける場合は「細い丸組紐」を平組紐の目を縫うように通す。袋の口にカード織りのバンドが縫いつけられる場合もあるが、やはり「細い丸組 紐」がそこに縫いこまれる。この「細い丸組紐」は先端に糸束のフリンジをつけ、左右に数センチ垂らすのが慣わしのようである。袋の提げ手もカード織りのも のと組紐のものと二通りある。
(Fig. 2 セプスス=sepu susu 日下部啓子画 (C) 2004)
私はこの5年間、この地域でパワラと呼ばれているカード織りを学ぶためにママサを訪れ てきた。そしてこの度、これまで私と交友のあったベテランの カード・ウィーバーは皆この組紐を作ることができるという事を初めて発見した。
西バッラ地域はママサで唯一カード織りが行われているところである。ママサの他の地域でもいったい、セプのためのループ組紐や緯文織りスンキッが行われて いるのであろうか、新たな疑問が湧いて来る。
タスマ 20代後半 R村出身
タスマはまだ若いが小さい頃からカード織りに優れ、手仕事に堪能な女性で、最近結婚して州都マカッサルに住んでいる。訪問した日、私の求めに応じてループ 操作の実演をしてくれた。この技法がママサ地方でマン・カッ・ビッmang ka bi と呼ばれていることが初めて分かった。これは先述のトラジャで耳にした言葉マッ・カッ・ビッma ka biとほぼ一致する(註13) 。
タスマは三つの操作方法を見せ、それぞれの名称を述べた。(Photo 3)その方法は以前ママサで別のウィーバーが実演したのと同じである。
掌を 内側に向かい合わせて、五つのループを左右の人差し指、中指、薬指にかける。空いた薬指で、対する手の薬指、中指のループの中を通り、人差し指のループを 取る。
取り方は
「移動ループの上糸を上から」
「移動ループの下糸を上から」
の二通りである。
(Photo 3 ママサL-M 技法実演 日下部啓子撮影 (C) 2004)
左右の手共「上糸を取る」と丸くなる マン・カッ・ビッ・カレブ mang ka bi kalebu
「上糸」と「下糸」交互に取ると平らになる マン・カッ・ビッ・ツンペパン mang ka bi tumpepan
左右の手共「下糸を取る」と二つに分かれる マン・カッ・ビッ・シルアン mang ka bi siluang
(ママサの言葉でカレブは「丸い」、ツンペパンは「平らな」、シルアン」は「二つに分かれた」を意味する。)
ネネ 約78歳 T村
この人の私のはじめてのカード織りの先生ママ・ウトの叔母さんで、大変手仕事にたけており、ネネと愛称されている。持参した「お土産の老眼 鏡」のお礼に、 若い頃織ったという伝統仕立てのズボンを私にプレゼントしてくれた。(Photo 4a)それは畝のある平織りの生成り木綿地で作られていて、裾など三個所に赤い組紐が丁寧に縫いつけられている。その内二つは丸く、一つは平 な組紐である。この畝のある織物のことをバンバン・ケッデッbamban kedeというそうだ。そ の午後、舟形家屋のテラスでネネは私が持参した木綿糸を使ってループによる組紐の技を見せてくれた。(Photo 4b)
(Photo 4a 伝統仕立てのズボンをはいたネネさん 日下部啓子撮影 (C) 2005)
(Photo 4b L-M 組紐 ネネさんの実演 日下部啓子撮影 (C) 2005)
穴のある紐 ランテ・ランテ rante rante
三つ数えながら、薬指で左右の人差し指のループの上糸を上から取る。 次にまた三つ数えながら左右の人差し指のループの下糸を上から取 る。「丸」と「二本同時」の技法を3目おきに交互に行っている。これを繰り返すと丸い組紐に規則的に穴のある紐ができた。以前この 紐を袋の口に縫いつけて紐を通して使ったという。ネネができてくるのを見ながら「ウオー、ウオー」と低い声をあげるのがとても印象的であった。ネネはこの 紐の名をランテ・ランテと言った。(註14)
ズボンの紐、プッルサンpurrusanを作る。その夜宿泊、トンコナンの中でネネは先ほどのズボンの紐を作ってくれた。(ズボンは紐通しのある仕立て) 木綿糸二本取りで、長さ約1mくらいの5つのループを操作、左右ともループ上糸を上から取る丸組の技法。近所の女性が向かい合わせで座り、ループが 行き交う毎に慣れた指づかいで組目を締める。このように「打ち込む」 事をマングガッライッmangngarraiという。できあ がった長い丸組紐はズボンにぴったりである。
カード・ウィーバーの会で ママ・バラ 約60歳 B村
5年間お世話になったお礼に、伝統織物の保存を願ってカード・ウィーバーの会を催した。7名が参集、遠い山奥の村から参加した最年長のママ・パラが刺繍や 組紐など古い手仕事を皆に披露してくれたのはとても有意義であった。
二人の組み手で行うループ操作の方法実演
以前にサダン・トラジャで求めたポテモアネ(男性用ポテ)、これは葬儀で男性がかぶる太い組紐の鉢巻で、木下氏が二名の組手を使う技法が現行されている可 能性を指摘されたものである。(photo 5)これを見せると、ママ・パラはさっそく隣村のママ・ブンツを相手に指示しながら組み始める。(Photo 6)
(Photo 5a, b ポテモアネ 日下部啓子撮影 (C) 2005)
(Photo 6 右 2人組ママ・パラとママ・ブンツの実演 日下部のパーティーで 日下部啓子撮影 (C) 2005)
以下の組み方解説では、ママ・パラ(L)、ママ・ブンツ(R)(組む人からみて)とする。
1.L左手薬指で自分の右手ループの中を通り、Rの左人指し指ループ上糸を上から取る。
2.Rは空いた左人指しで、Lの右人差し指のループの上糸を下から掬うように取る。
3.Lは右ループを人指し指方向に移動させた後、右薬指で左ループの中を通り、左人指し指ループ上糸を上から取る。
4、Rは右薬指で左ループの中を通り、左人指し指ループの上糸を上から取る。
5、Rは左ループを人指し指方向へ移動の後、薬指で右ループの中を通り、右人指し指のループ上糸を上から取る。
1-5を繰り返す。
(Photo 7 男の子も飛び出してきて、「僕も組めるぞ」 日下部啓子撮影 (C) 2005)
日本に帰ってからママ・パラが組んだものを以前にサダン・トラジャで手に入れた男性用ポテと比較してみた。ポテは整ったやや台形をしているが、ママサで 作ったものは歪んだ長四角形になっている。第二の畝の組目が隣り合う二畝の組目をくぐって出るのではなく、内に入りこみ陥没している。
木下氏にお聞きしてよく分析してみると、2の操作でループの糸の上下が変わり4でさらに捻るので、同じループを二度捻って取ったことになる。その結果台形 にならなかったようだ。ママ・パラのちょっとした記憶違いかも知れないし、こういう方法もあったのかも知れない。
今回旅へ出発する直前、ループ操作技法について木下氏より技術的な点をご教示頂きここに報告するリサーチが実現した。帰ってからこれまで収集したトラジャ の染織品を改めて調べてみると、LM技法の組紐が何と多く含まれていることか。
ループ操作技法はかつてトラジャ族の伝統的文化・生活の中で一定の役割をもち、染織技法の中の欠く事のできない一部だったのではないだろうか。これを行う 行為がカッ・ビッ ka biというトラジャ語の名称を持っているこ とからもそのことが推察される。
この調査・研究は野村国際文化財団より芸術文化助成を受けて行われた。ここにお礼を申しあげます。
参考文献
日下部啓子「豊かなトラジャの染織文化」 染織α、(1)241号、(2)243号;「貴重な トラジャのカード織り技法」(1)253号、(2)255号;「知られざるママサのカード織り技法を探る」(1)265号、(2)267号、(3)269 号。'Tablet Weaving from Sulawesi in Indonesia,' TWIST, Fall 2002, Spring 2003; 'Pattern and Technique in Mamasa Tablet Weaving,' Fall 2003, Spring 2004; 'Learning in Holland/Experimenting with the Two Thread technique,' Summer 2004
Hetty Nooy-Palm, The Sacred Cloths of the Toraja -Uanswered Questions (included in 'To Speak with Cloth') J.Tammu & Dr.H.van der Veen, KAMUS TORAJA-INDONESIA=トラジャ-インドネシア語辞書, 1970.
<トラジャ族に関する民族学的著作>
山下晋司、『儀礼の政治学』、東京:弘文堂、初版1988年(絶版)。
鳥越超憲三郎 若林弘子、『倭族トラジャ』 大修館書店、初版1995年。
Hetty Nooy-Palm , THE SA'DAN-TORAJA, The Hague: Martinus Nijoff, 1979.
[編集者蛇足]
技法は「掌上向き或いは向かい合わせで内側指(小指か薬指)で操作する」もので、日本、タイ国、インドなどアジア で用いられている 技法に共通する。組み方の種類も共通する、丸(角)、2畝平、4畝平の3種である。(註15)
特記されるべきは、以前の現地調査で日下部氏が蒐集したポテモアネに用いる紐を組む技法を知っている人が見つかり、L-M2人組が現行されているこ とがわかった事である。
但し、ポテモアネは2連角組であるが、ママ・パラの組み方は2連角組とは少し異なる。ママ・パラの組み方では、連結操作の右側の組み手から左側組み手への 移行には、1回の操作でループが左組み手の左手まで移行するが、逆方向では同じ移行操作を2回に分けて行う。このように操作が左右対称に行われないのも珍 らしい。またここでループが2回捻られる結果を呼んでいる。
実際にママパラの手順が行われているのかどうかについては、今後の調査にたのみたい。
2人組の技法は、イギリス、ドイツなどの古記録にあるもので、日本で も中世期に用いられていたことは確実であるが、< /font>こ れまでの現地調査で現行されている事実の報告はな く、本報告が初回である。
驚いたことには、新発見と思ったインドネシアのL-M組紐技法の、ka biと言う「ループ組紐」を意味すると思われる語がトラジャ-インドネシア語辞書にとうの昔から載っていた。しかしこれはトラジャの人々がこの技法を昔か ら知っていたことと同類で、我々としては今回の日下部氏の報告により、この技法が実行されている土地がL-M組紐技法世界分布地図に載ったことに意味があ る。組紐を意味する ka bi というトラジャの言葉が、ループ技法のしぐさを描写するものと見えるのは、この技法が民族の中で永年愛されて用い続けられてきた唯一の紐を組む技法であっ たことを示唆するものではないだろうか。
調査協力者たちの中の相当数が技法は知らなくても名前は記憶に残っているという。技法が比較的最近まで用いられていたこと、既にかなりの期間斜陽である事 を示唆するものであろう。
インドネシアでも染織の伝統は急速に姿を消しつつあり、現地調査は人々の記憶を手繰り寄せるような作業であったという。しかし独特の技法を持つカード織り はこの人々の誇りであり、また現金収入という現実に支えられている。L-M技法も主としてそのグループの人々の中で生き延びているのである。これを機会に この地でも技法が再認識され、復興の契機となることを切に願う。
イラスト L-M 組紐技法入門シリーズ:基本編 II
ループ指操作法による2重組紐と旗竿柄組紐の組み方 (註16)
(Photo 2b 右 2重組紐と旗竿柄組紐の例)
イラスト L-M 組紐技法入門シリーズ:第 8 回
7ループ4畝綾織組織2本同時組手順と12ループ4畝綾織組織2本同時組手順
(Photo 8 上 4畝綾織組織平組2本同時 下 6畝綾織組織平組2本同時旗竿柄
木下雅子作製・撮影 (C) 2005)
ループ操作組紐を記録するためのしおり
もし偶然にループ組紐を知っている人に出会った時に、その技法を記 録してお知らせ下 さい。その記録を取る ための要点のリストです。
†L-M 組紐関係出版物:
出版物:"Fingerloop Braiding" (シリーズ:Compleat Anachronist 108) の著者L. SwalesとS. Goslee ("Phiala's String Page" www.stringpage.com) は同書に入れなかった同書典拠中の手順とその利用方法を含む続編を編纂中、同シリーズより出版予定。時期未定。
新聞報道:東 奥日報2005年3月4日金曜 日夕刊第1面にクテ打とその指操作技法の伝承者、青森市在住の久米田礼子さんを紹介。
インターネット URL: http://www.fingerloop.org:Greg Lindhalのループ指操作組紐技法の情報ページ Swales の Fingerloop Braids の正誤表、Natura Exenterata 中のL-M技法記録のウェブコピーを搭載する。将来はトルマッシュのウェブコピーも乗せる予定。 URL: Fingerloop Braiding: Gothic secrets and Modern Delights
http://www.lightlink.com/rhiannon/Fingerloop/flb_index.html 又は http://www.lightlink.com/rhiannon →クリック Fingerloop Braiding: Gothic secrets and Modern delights Swales のループ指操作組紐技法の情報ページ、Swalesの講習会のテキストの pdf と 小冊子Fingerloop Braids の正誤表などを ダウンロードできる。
†活動:(2004年3月より2005年3月まで)
・展覧会 日 根孝子、木下雅子、角浦節子 8角目レース様組織技法を使った壁掛 英国 Braid Society の創立10周年記念回覧展(ロンドンを始めとする5市を2003年10月-2004年9月まで)
展覧会 2004「ループ組紐への招待」・木下雅子が代表するループ組紐グループの主催・財団法人全日本きもの振興会協賛で2004/10/23(土曜日)-27 (水曜日)・奈良市 国際奈良学セミナーハウス内旧世尊院客殿で開催。連日多数の観覧者、ループ組紐の実演・実習でにぎわった。出展者27名、L-M組紐 技法に関する研究資料のパネル15面、L-M組紐世界分布地図、資料写真約90点、古代中世組紐復元試料約30点、民俗資料パネル装3面、民俗資料7点、 会員作品約100点が展示された。川辺千佳代 堺市緑化センター展 05/3/4-6 アクセサリー、トルマッシュ技法サンプル帳を展示。(Photo 9 右 L-M組紐技法世界分布地図 制作木下雅子、 写真大久保治、L-M BRIC ニュース (C) 2004)
・制作:展 覧会 2004「ループ組紐への招待」には、ループ組紐グループのメンバーの創作作品:3次元オブジェ、バスケット、モービル、額装、壁掛け、テーブルマット、 ストール、小袋、帯締、アクセサリー、サンプル帳など約100点が展示された。展覧会 2004「ループ組紐への招待」ギャレリー
・講習会: 川辺千佳代 04/9/11 泉大津市立織編館親子教室、05/1 大谷女子短大で特別講義。 木下雅子 04/11/14-15 奈良市国際奈良学セミナーハウス クテ打、トルマッシュ技法各1日入門講習会。河田泰之 05/1/29 泉南市埋蔵文化財センターで講習会 小学生の親子連れ2組を含む12名が集まった。参会者はその後老人ホームのボランティア、小物作り、ヒョウタン細工などに習得技法を利用されているとのこ と。久米田礼子 05/1/22、2/5、3/5 青森市新城山田平和台団地集会所講習会 3月5日の会には、前日に東奥新聞の夕刊第1面に大きな記事が出た事も助けにな り津軽半島、下北半島方面から駆けつけた人も含めて約45名が集まった。The Society for Creative Anachronism, Inc.(SCA)主催, C.Priest-Dorman 企画 講習会 05/3 指組紐l入門、Allison Sarnoff; 中級クラス ループ交換法、Kate Dixon; 7ループ指組紐技法;1本の指に2本のループの操り方、Lisa Fogelman; 多人数組を1人で組む、 Sarah Goslee.
・調査:日 下部啓子 インドネシア・スラ ウェシ島トラジャ地方の実地踏査による染織製品の調査、野村国際文化財団2004年度下期個人技術文化助成。小村真理 復元材料としての絹糸の調査、白鶴 美術館所蔵金銅装唐組垂飾一括を調査。
・講演・研究発表など:小 村真理、井上美知子、木沢直子(財)元興寺文化財研究所、志村明 勝山織物株式会社絹り製作研究所、佐藤昌憲、佐々木良子 奈良文化財研究所 「古代から中世の組紐の糸に関する調査」ポスター発表 保存修復学会。小村眞理(財)元興寺文化財研究所 04/12/16「古代から中世の組紐の特徴」ポスター発表及び「古来の組紐技法について」講演 奈 良文化財研究所保存科学研究集会。井上さやか 2004/11/5-6 「平家納経の組紐の組織を模倣する」 ポスター発表 平成16年度国宝修理装こう 師連盟第10回定期研修会記念国際シンポジューム〜東洋文化財修復技術の現状と未来〜。
†謝辞:・ 寄稿―日下部啓子、情報・写真提 供ーJoy Boutrup、Lisa Fogelman、K. Selden, R, J. Smith, Lois Swales、献金 角浦節子、山辺悦子 また手紙を頂いた方達に感謝します。
*L-M BRIC News はループ操作組紐技法の知識と理解を広ろめるため、 年1回発行、印刷版を無料で配付しています。御希望の方は編集者までお知らせくだ さい。但し御理解者の献金は歓迎します。